Secret Lover's Night 【連載版】

「何かヤダ、あんな晴」
「こらこら、そうゆうこと言っちゃダメでしょ。せっかく王子が脱鬼畜したのに」
「見てよ、あれ。まるで別人じゃない」
「まーまー、マリちゃん。昔はあんな頃もあったんやで？」
「…想像つかないんだけど」


「おい。全部聞こえてるからな、それ」


「あれ？あははー」

三人共が「あはは」と乾いた笑いをするものだから、そのまま千彩を腕の中に収めて晴人はじとりと睨みつけた。

テーブルに置いた缶コーヒーをポイッと投げ付けながら責めるも、やはりこんな表情をしたままでは睨みも利かせられない。それは十分わかっていた。

「まぁええわ。ちぃ、はいジュース。ちゃんとメーシーにありがとうしてや？」
「あっ、うん！めーしーありがとう！」
「どういたしましてー。姫は髪が短い方が似合うね。うん、可愛い」
「そう？」

ちょんと毛先を摘んで見上げる千彩の頭を撫で、大きく頷いてみせる。手で遊べなくなったのは少し寂しいけれど、メーシーの言う通り短い方が似合っている。それに、これで手入れに苦戦することはないだろう。

「マイエンジェール！プリティーエンジェール！」
「あはは！けーちゃんそればっかり」
「だってほんまそうなんやもん。おいで？俺服持って来たから着替えよ！」

またか…と、晴人は項垂れた。恵介がこの一週間で千彩にプレゼントした洋服の数は、１０着では済まない。部屋に来る度にあれやこれやと持ち込み、２０…いや、３０は超えているだろう。元々衣装持ちだった晴人のクローゼットは、言葉通り服で溢れていた。ため息を吐きたくなるのも無理はない。

「ほらほらっ。マイエンジェルが着替えるから男共は出て！」
「えっ、おい！恵介！」
「んー？」

追い出されかけ、慌てて千彩を引き戻す。

「待て。出るんは俺やなくてお前や」
「えー？俺コーディネートせなあかんのにー」
「喧しい！この阿呆めが！」

バシンッと一発くれてやると、シッシッと男二人を追い出す。そして、恵介から受け取った荷物をマリにそのまま渡し、部屋を出ようと一歩踏み出した時だった。

「え？晴も出るわけ？」

きょとんと目を丸くしたマリが晴人を引き止めた。

「出るよ。着替えるんやから」
「え？なにそれ。意味わかんないんだけど」
「は？意味わからんのはお前やろ」
「え？なに？」
「言うたやろ？本気やって」
「は？」
「まぁ…わからんのやったら着替える時にでも見てみたら？」

そう言い放ち、メイクルームの扉をパタリと閉めた。