Secret Lover's Night 【連載版】
千彩の宿泊が二、三日だったのは、晴人が千彩を紹介したその月だけ。あとの二ヶ月は、月の内半分はここで過ごしていると言っても過言ではない。
「俺の方が長いこと一緒におるのにな。全然コイツのことわかってやれてなかった」
「それはだって…」
「コイツはいつだって笑ってて、おかんもお姉もガキ扱いしとるし、お兄もまるで妹か娘みたいに扱うとるし、ヤクザなお兄さんに育てられたわりには全然スレたとこ無いし…そんなコイツ見て、俺はずっと変な奴やと思ってた」
「あー…うん」
バツが悪そうに苦笑いで話す智人を、悠真は責めることが出来なかった。
自分は勿論、言うまでもなくそうだけれど、智人にとっても晴人は憧れの存在。そして、大好きな自慢の兄なのだ。バンドを始めた理由も、「お兄と同じくらい有名になりたい!」と智人が言い出したからだった。
「お兄がコイツ好きになった理由、ちょっとわかる気がする」
「…え?」
「コイツは、俺らが持ってないもんを持ってる。持ってて、無くしたもんを今でも持ってるんや。お兄はきっと、そんなコイツに惚れたんやと思う」
今まで散々反対をしてきた。懐かれるから可愛がりはしたのだけれど、やはり千彩を兄の恋人だとは認めたくなくて。
それを認めてしまうのは少し癪だけれど、わかってしまった以上は認めないわけにはいかない。
「お兄もあれでなかなか不器用なとこあるから、ちゃんと千彩のこと躾けとったらんと」
「躾って…犬猫やないんやから」
「まぁ、同じようなもんやろ」
後ろから空になった容器に手を伸ばした智人に、千彩は「ひ…っ!」と小さく悲鳴を上げて肩を跳ねさせた。これは…と、智人は身を固くした千彩の手からスプーンを抜き取ってそっと頭を撫でる。
「怖いんか?」
「…うん」
「何が怖いねん」
「後ろから…手が…連れて行かれる。どっか…売られる…」
身を固くしたままの千彩は、小さな声を押し出す。
こんな小さな体に、どれだけ大きな傷を抱えていると言うのだろうか。
そんなことを思いながら頭の上に手を乗せたまま頬を寄せ、智人はコツンと千彩と頭をぶつけた。
「そうや。そうやって全部言うたらええんや」
「でも、はる…心配する」
「言わへん方が心配するわ。お前が何も言わんとじっと我慢してたら、晴人は悲しいと思うぞ」
「悲しい?ちさのせいではる、悲しくなる?」
情けなく眉尻を下げて問う千彩に「せやから晴人には何でも話せ」と教え、躾けを一つ終えた飼い主は満足げに笑った。
「俺の方が長いこと一緒におるのにな。全然コイツのことわかってやれてなかった」
「それはだって…」
「コイツはいつだって笑ってて、おかんもお姉もガキ扱いしとるし、お兄もまるで妹か娘みたいに扱うとるし、ヤクザなお兄さんに育てられたわりには全然スレたとこ無いし…そんなコイツ見て、俺はずっと変な奴やと思ってた」
「あー…うん」
バツが悪そうに苦笑いで話す智人を、悠真は責めることが出来なかった。
自分は勿論、言うまでもなくそうだけれど、智人にとっても晴人は憧れの存在。そして、大好きな自慢の兄なのだ。バンドを始めた理由も、「お兄と同じくらい有名になりたい!」と智人が言い出したからだった。
「お兄がコイツ好きになった理由、ちょっとわかる気がする」
「…え?」
「コイツは、俺らが持ってないもんを持ってる。持ってて、無くしたもんを今でも持ってるんや。お兄はきっと、そんなコイツに惚れたんやと思う」
今まで散々反対をしてきた。懐かれるから可愛がりはしたのだけれど、やはり千彩を兄の恋人だとは認めたくなくて。
それを認めてしまうのは少し癪だけれど、わかってしまった以上は認めないわけにはいかない。
「お兄もあれでなかなか不器用なとこあるから、ちゃんと千彩のこと躾けとったらんと」
「躾って…犬猫やないんやから」
「まぁ、同じようなもんやろ」
後ろから空になった容器に手を伸ばした智人に、千彩は「ひ…っ!」と小さく悲鳴を上げて肩を跳ねさせた。これは…と、智人は身を固くした千彩の手からスプーンを抜き取ってそっと頭を撫でる。
「怖いんか?」
「…うん」
「何が怖いねん」
「後ろから…手が…連れて行かれる。どっか…売られる…」
身を固くしたままの千彩は、小さな声を押し出す。
こんな小さな体に、どれだけ大きな傷を抱えていると言うのだろうか。
そんなことを思いながら頭の上に手を乗せたまま頬を寄せ、智人はコツンと千彩と頭をぶつけた。
「そうや。そうやって全部言うたらええんや」
「でも、はる…心配する」
「言わへん方が心配するわ。お前が何も言わんとじっと我慢してたら、晴人は悲しいと思うぞ」
「悲しい?ちさのせいではる、悲しくなる?」
情けなく眉尻を下げて問う千彩に「せやから晴人には何でも話せ」と教え、躾けを一つ終えた飼い主は満足げに笑った。