Secret Lover's Night 【連載版】
時刻は15時。

何度電話を鳴らしても出ない千彩に、晴人は大きな不安を抱えていた。

「俺やっぱ帰るわ」
「ダメダメ!これ以上明日に仕事回されたら俺がギブだよ」

次の撮影をキャンセルして帰ろうとする晴人を、ここ数日のハードワークで苛立ったメーシーが引き留める。

妊娠がわかり入籍をし、メーシーもメーシーなりに忙しい毎日を送っている。それに加えて、度重なる晴人の急なスケジュールの変更。

その理由が全て千彩ときたものだから、メーシーだけならず仲間内はもううんざりだった。

「そんな顔してもダメだ」
「いや、だって」
「もう子供じゃないんだから」
「いや、子供やで?あいつ」
「あっ…そう。王子は自分がロリコンだって認めるんだね?ふぅん」
「いやっ…そうやなくて…」
「残念だ。実に残念」

わざとらしくため息を吐くメーシーに、晴人は降参だとばかりに両手を広げる。そんなやりとりを遠巻きに見ていた恵介が、千彩よろしく「はーい!」と手を挙げて駆け寄った。

「俺がちーちゃんの様子見てくる!もう終わりやねん」
「ほな俺と撮影代わって」
「いや、無理やろ。俺カメラなんかいじったことないし!」
「大丈夫、大丈夫。ここ持ってシャッター押したら・・・」
「王子ー?」
「はい。すいません、メーシー様」

まさしく鬼の形相。いや、悪魔の本領発揮か。

普段の穏やかな表情とは正反対のメーシーの表情に、晴人は大人しくカメラを持った。そして、ポケットからキーケースを取り出して、嫌々ながらも恵介に投げる。

「具合悪いんやったら病院連れて行って。保険証は・・・」
「サイドボードやろ?」
「おぉ。頼んだ」
「任せて!」

嬉々とした恵介は、キーケースを握りしめてスタジオを出た。その後ろ姿を見送りながら晴人は深いため息を吐く。
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