Secret Lover's Night 【連載版】
「ん?晴人の名刺?」
「そう!俺らデビュー決まってん!」
「そうなんっ!?やっとかー!おめでとう!」

嬉しそうに「ありがとー!」と笑う悠真とは対照的に、智人はどこか複雑そうで。そんな智人にふっと笑い声を零し、晴人は擦り寄る悠真の頭を撫でた。

「もうちょっと先やと思ったんやけどな」
「智人が本気出したからな!」
「女出来てヤル気出しただけやろ」
「ちゃうわ。付き合うとらへんし」
「どうだか」
「にーちゃん妬いてんのか?」

ふんっと不満げに鼻を鳴らす晴人にベッタリとくっつきながら、悠真が茶化す。おいおい…と止めようとする恵介を制し、智人が悠真の手にあった自分の財布を奪い取り、その中から二枚のチケットを取り出した。

「やるわ。デビューイベントのチケット。千彩連れて来いや」
「俺のは?」
「え?恵介君も来るん?」
「何でそんなん言うねん!俺だって弟の晴れ姿見に行くわ!」

目に涙を溜めて必死に訴える恵介に「ごめん、ごめん」と笑い、智人は問う。何枚?と。

それに「ん?」と首を傾げ、恵介は何の躊躇いもなく「一枚!」と人差し指を立てた。

「へぇ…」
「何?」
「いや、別に。恵介君はまだ一人なんやと思って」
「俺は晴人とちーちゃんの世話で忙しいからな」

ニッと笑う恵介を見て、智人は思う。あぁ、結局言えずにいるのか、と。

この時点で恵介と鈴音は既に東京で同棲をしていたし、地元ではそれを知っている人も少なくなかった。知られていないと思っているのは本人達だけだ。

「まぁ…婚期逃さんようにな」
「余計なお世話や!」

パシッと智人の頭を叩き、恵介は唇を尖らせる。そんな恵介に、晴人は呆れたように言った。
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