Secret Lover's Night 【連載版】
「お前もはよ結婚せぇよ」
「いやいや。自分かてまだしてへんやん」
「俺はちぃがおるからな。お前は相手さえおらんのちゃうんか。俺は親友として心配や」

そんな晴人に、恵介は苦笑いをするしかなくて。言い出せない苦しさと、もう言ってしまおうかという開き直りがごちゃ混ぜになり、上手く言葉が出ない。

「恵介君は昔っからお兄のこと大好きやからな」
「俺にそんな趣味は無い」

心底嫌そうな表情でキッパリと言い切る晴人を前に、智人が出してくれた助け舟を有り難く受け取った恵介はパッと気持ちを切り替える。今はまだその時ではない。そう自分に言い聞かせて。

「まぁ、ええやん。そのうち俺だって結婚するって」
「まずお前みたいな適当な奴と付き合うてくれる女がおるんか、俺にはそれが疑問やけどな」

何も知らない晴人は、そう言って笑う。今はこれでいい。そんな恵介の思いを悟った智人は、それ以上深く突っ込むことはせず財布の中から新たなチケットを取り出した。

「はい。これ、恵介君の分な。ほんで、これは吉村さんの分」
「俺にも?」
「そりゃまぁ…家族やし」
「ありがとうございます!」
「ほんでこれ…さっきの人らに渡してや。来るかどうかは任せるけど、千彩のことで迷惑かけたやろし、お詫びとお礼」

そう言いながら二枚のチケットを差し出し、智人は未だ晴人にベッタリの悠真の頭をパシンッと叩いた。

「いつまでそうしとるんや」
「別にええやん。ちーちゃん寝てるんやし」
「気持ち悪い奴め。あぁ、言うとくけど、さっきの人がMEIJIさんやからな」
「は?」
「ヘアメイクの。そうやろ?」
「おぉ」

智人の問い掛けに、晴人が答える。紹介した覚えは無い。けれどまぁ…気付いて当然か、とも思う。

そうゆう奴なのだ、智人という弟は。
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