Secret Lover's Night 【連載版】

 未来永劫の約束

翌朝、何事も無かったかのようにスッキリと目を冷ました千彩。んー!と大きく伸びをして起き上がると、隣で意外な人物が寝息を立てていた。

「ん?マリちゃん?」

そういえば…と思い返す。公園に行って、渚の家へ行って…と昨日の自分の行動を思い出し、千彩は慌ててベッドから下りてリビングへと駆けた。

「おはようさん、ちー坊」
「おにーさま…」

もじもじしながら言い訳を探す千彩を呼び寄せ、吉村はゆっくりと頭を撫でて笑った。

「せやからいつも言うとるやろ?勝手に公園行ったらあかんって」
「…うん」
「帰ろか。おにーさまと一緒に」
「…うん」

きっと、こんな悪い子はもうここに置いてもらえない。そんな千彩の思いは、幼い頃から千彩を見てきた吉村にはお見通しだった。

「ハルさんがな、ちー坊を幸せにしてくれるんやと」
「え?」
「ハルさんがおったらもう怖いことなんかない。せやから、ずっと一緒におるんや。離れたらあかん」
「ちさ…ここにおってもいいの?」
「ええんや。せやから、ちゃんと約束守るんやぞ?今度破ったら、怖いとこ連れて行くからな」
「イヤっ!ちさ、ちゃんと約束守るからっ!」

慌てる千彩をギュッと抱き、吉村は優しい声音で紡ぐ。

「ちー坊、絶対に帰ってきたらあかんぞ?女は嫁いだらその家の娘になるんや」
「どうゆうこと?」
「お前にはもう帰る家が無いってことや」
「え?おにーさまお引越ししたん?じーちゃまとばーちゃまは?」
「ちゃうがな」

まだ難しかったか。そうは思ったのだけれど、ここは父親として伝えておかなければならない。そう意を決して吉村は言葉を続ける。
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