Secret Lover's Night 【連載版】
「やっぱええな、友達って」
「何やねん、急に」
「ちさも!ちさも!」

仲間に入れて!と飛び跳ねる千彩に笑い声を上げたのは、10年超えの親友同士だ。

「何で笑うん?」
「可愛いなー、お前は」
「カワイイから?」
「そうそう」
「変なのー」

ぶぅっと頬を膨らせる千彩を両側から挟み、晴人と恵介は視線を合わせた。

「あんまキツイのは勘弁してくれよ」
「キツイって…」
「昔の話は堪えるんや、ココに」

トントンと自分の胸を叩く晴人にぷっと噴き出した恵介は、低い空に向かって「ごめん」と小さく呟いた。誰に宛てた謝罪なのか。そんなことは、晴人にはお見通し。けれど、そこを深く突っ込まないのも晴人なのだ。だからいい。互いにそう思える友人は、そうはいない。

「ちさも友達?」
「勿論やん!」
「はるも?」
「俺も?」
「はるもちさの友達?」

首を傾げてキラキラとした瞳で見上げられては、頷かないわけにはいかない。けれど、それだけで終わらせないのが晴人。

「俺は友達よりもっと凄いんやで」
「なんで?」
「だって、一生ちぃと一緒におれるんやから。な?凄いやろ?」

うーん。と一度考えた千彩だけれど、すぐさま目を輝かせて満面の笑みで晴人を見上げた。

「ちさだけ?」
「そうや。俺にはずっとちぃだけ」

その言葉が聞きたかった。千彩の胸の鼓動は高鳴るばかり。足をバタつかせて「きゃー!」と大きく叫ぶと、勢いよく晴人に抱きついて「大好き!」と笑った。

「ありがとう!」
「んー?」
「ちさも、ずっとずっとはるだけ大好き!」
「えー?ちーちゃん、俺はー?」

その言葉に異議を唱えたのは、見せつけられている恵介だ。何も晴人だけが千彩を好きなわけではない。自分だって千彩が大好きで、いつまでも千彩に好きでいてほしい。それが恋愛感情かどうかは別として。

「けーちゃんも大好き!」
「やんなー」
「お前は「お友達」や」
「うん!けーちゃんはちさのお友達!」
「えー!」

不満げに唇を尖らせる恵介の鼻を抓み、晴人は真っ直ぐに向き合った。

「俺のやからな」
「いやっ。そうゆう意味ちゃうやん」
「あかん、あかん。悪い男の芽は早めに摘んどかんとな」
「悪い男って…」

一度は否定しようとはしたものの、千彩の周りに集まる男達を思い出し、恵介は苦笑いをした。メーシーに智人に悠真、そして渚。メーシーは…と思うものの、彼も彼で侮れない。

「モテモテやなー、ちーちゃん」

ポンッと頭を撫でると、千彩は首を傾げて不思議顔で。これもこれで可愛い!と唸る恵介に、晴人はピンッとデコピンをしてギュッと千彩の肩を抱いた。

「どうしたん?」
「俺はずっとちぃだけやで。せやから、ちぃもずっと俺だけでおってな?」
「ん?んん?うん?」
「わからんかー。ははっ」

もう少しその辺りのことを教え込んだ方がいいかもしれない。まだまだ刷り込み教育が足りないようだ。と、苦笑いで擦り寄る晴人。そんな晴人の腕に、嬉しそうに絡み付く千彩。やはり、こんな風に穏やかに笑っている晴人が一番好きだ。羨ましがりながらも、恵介はそんな風に思った。

「ちーちゃん、スーパーまで競走しようや!」
「うん!」

元気いっぱいに掛けて行く二人の背中を見ながら、長い夜になりそうだ…と晴人は静かにため息を吐いた。
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