私の恋人は布団です。

「こ,この子は!親戚の子で!隆也君って言うんだけど……」

 延は覚悟を決めた。

 兎に角,皆の誤解を早く解いてしまいたい。

「俺の名前,覚えていてくれたんですね!」

 隆也は,感無量と言った風に喜ぶ。

(何でなの……この人の頭に耳と,後ろには尻尾が見える……気がする……)

 隆也の態度は,大型犬が大好きな飼い主にじゃれている様子に似ていた。


「と,兎に角!変な関係じゃないから。……ね!?」


 いささか強引に片付けて延は隆也に向って作り笑顔を浮かべた。

 延は,目配せで,
(“はい”って言いなさいよ!)
 と,隆也を睨み付けている。


「ヘン?……あ,はい」


 延は,ほっと肩を落とす。



「毎晩一緒に寝るくらいです」


 にこっと隆也は悪びれなく言った。


 同時に,ヒソヒソ声に拍車が掛かった。

「えぇ~?」とギャラリーの声が木霊する。


(コ,コイツをブラックホールに突き落としたい……!!)

 延はがっくりと項垂れた。

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