私の恋人は布団です。
延は,何とか親友と先輩を振り切って,隆也の手を取って逃げた。
延と隆也は,公園に居た。
「もう先輩と……顔合わせられない……」
親友の加南子ならば,正直に話そうかとも思った。
しかし,先輩に“朝起きたら布団がこの人になってました”とは間違っても言えない。
「あの,俺……済みません。延さんの言い付け守れなくて……」
元はと言えば,この男の所為だ。
延は,隆也に言いようの無い怒りを覚えた。
「……えて……」
延は静かに,そして低い声で言った。
「え?延さん,聞こえな……」
「私の前から消えてって言ってるの!」
こんなに大きな声を上げることなど,普段の彼女では考えられなかった。
しかし,理解不能な出来事に加え,親友や慕っている先輩にまで誤解されたのだ。
延のそれは仕方ないとも言える。
「…………どういう,意味ですか……?」