私の恋人は布団です。
瞼に光が差し込んでくるのが分かる。
目覚まし時計が定刻を告げる前に,延の意識は珍しく覚醒していた。
(私の,尊敬する人……ねぇ)
延が尊敬している人物といえば,月並みに言えば両親である。
ただ,あのアキラという自称神様の男には含みがあった。
何かを確信したような物言いと真剣な眼差しは,嘘とはとても思えない。
胸の前で腕を組み,天井を見上げながら延は唸った。
(気にしないようにしよう。それより,今は先輩のコトを考えなくちゃ……)
大きく深呼吸をして,延は珍しく目覚ましが叫ぶ前にアラームのスイッチを切った。
「の,延さん……お早う御座います。あの,俺,今日は……」
押入れから隆也の篭った声が聞こえた。
「布団のまま其処で留守番に決まっているじゃない」
「で,でも……」
「押入れから出るなって言ったでしょう。それに……今から着替えるんだから,出てきたら……燃やすわよ?」
「…………」
隆也が大人しくなったのを確認して,延は支度を始めた。