私の恋人は布団です。
「それで?正直に話しちゃったの?」
鞄を机に載せたまま突っ伏す延に,加南子は拗ねるように言ってみせた。
「うぅん。一部だけ……」
「一部って……?」
「……だから,隆也って言う子は謎だらけで……偶に来ては私に構うって……神出鬼没だって,言っといた……」
「苦しい通り越して逆に効果的かもね」
加南子は心にも無いことを言った。
「でも,それ以上は聞かなかったし……」
(意外だわ。佐上先輩はもっと延で遊びそうだけど……)
「変な夢は見るし。しかも変な男に変な事言われるしさ。私の尊敬する人に気をつけろって,どういう意味なんだろう……。カナ,分かる?」
いつもは気丈な親友が弱りきっているのを見て,加南子は少しだけ胸が痛んだ。
あくまでも“少しだけ”である。
「……そうねぇ。延の尊敬する人って言ったら,やっぱり」
加南子は,あの爽やか過ぎる生徒会長を思い浮かべて,その名を言おうとした。
しかし,予鈴の音と担任の教師が教室に入って来た事で生徒達が一斉に席についたため,その声は掻き消されてしまった。
「早く席に着くように。今日は転校生を紹介するからな」
延は机から顔を上げながら何故だか言いようの無い寒気を背中に感じていた。