私の恋人は布団です。
それまでお喋りに夢中だった女生徒達が静まる。
男子生徒も隆也の発言によって動作を封じられている。
教室は水を打ったようにシィンと静まり返った。
誰かの箸が落ち,プラスチック特有のカランと床を滑る乾いた音が響いた。
そして,堰を切ったようにヒソヒソ声のボルテージは上がり,ヒュウっという口笛が鳴った。
生徒の視線が一気に延に集中する。
「こ,こんな処で何てこと言ってるの!!」
怒り心頭に発すると言った表情で,延は隆也を睨んだ。
「済みません!……何処でなら良いですか!?」
「そういう問題じゃないの!!」
「ご,強引じゃないからですかっ!?」
(最近,大人しくなってきたと思ってたのに……ちょっとは優しくしようとか思った私って一体……と言うか強引とか強引じゃないとか意味不明だわ……!!)
「羽河,返事してやれよ~」
冷やかしの言葉に,益々延の怒りは沸点に向う。
「延。……とりあえず,場所を変えたら?」
友人の言葉に,延はやっと自分の状況を把握した。
「そ,そうね。ありがと」
加南子に目配せして,延は隆也を教室から引っ張り出した。