私の恋人は布団です。
とても幸せな気分だった。
念願のデートの後,素っ気無い態度で見事,延の心を射止めたのだった。
そうして,また掛け布団で居た時のように一緒に寝ることが出来た。
しかも,延が自分のことを好きだと言ってくれる。
……と言う豪華3本立ての妄想が隆也の脳内で繰り広げられていた。
「……全然幸せじゃないんですけど!!」
隆也は,テストが近い事に気付かなかったのだ。
修一による教本の内容は完璧に覚えていたが,テスト範囲は全く記憶していなかった。
「それは君が赤点を取るからだと思うよ,先生は」
「…………」
「そのプリント終わったら,職員室まで来なさい。採点するからね」
「……はい」
担任教師が教室を後にしてから暫く経つと,廊下の向こうから教室まで歩いてくる足音が聞こえた。
「……ちゃんと勉強しないからよ」
呆れ顔で教室に入ってきたのは,今,恐らく隆也が一番会いたかった人物だった。