私の恋人は布団です。

 延は息を整えた。

 思い切り床にぶつけた額を手で擦る青年に,延は向き直った。


「……それで,アナタは……何処のどちら様ですか?」


 とりあえず,凶器は所持していないようである。

 それに,貞操も守られているようだった。

 延は,先刻より少しは落ちついていた。



「そんな……!!俺を忘れたんですか!?」


 青年は,今過ぎにでもぶわぁっと目頭から涙を零しそうな勢いだった。


(えぇ…?昼ドラみたいなコト言われても……)


 延は,訳が分からない。



「俺は,延さんの掛け布団です」



 明るく青年は言った。


(掛け……布団……?今,この人,自分のこと掛け布団って言った……!?)

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