私の恋人は布団です。
延は,ますます意味が分からない。
「昨日,枕神様に頼んだら,人間になれました♪」
(あれ……今,この人,もの凄ぉく可愛い調子で,もの凄ぉく非現実なこと言ってる……?)
延は頭の中がショートしてしまいそうだった。
「ちょ,ちょっと待って。まず,枕神サマって何者?」
「知らないんですか?夢枕に立って,夢の中で神託を告げる神様ですよ」
青年は,誇らしげに言った。
「それで,アナタは…かけ,ぶとん…さん?」
(外国の方なのだろうか……変わった名前……)
「そうです」
「じゃあ,かけ,さん……」
「違いますよ!ちゃんと名前も頂きました。名前って,ニンゲンには必要なんでしょう?」
青年は胸を張って言う。
「俺の名前は,隆也(たかや)です。ちゃんと覚えてくださいね?」
青年の,にっこりと甘さを含んだ笑顔とは裏腹に延は軽い眩暈を覚えた。
「はぁ……」
がしっと両手を包み込み,青年は延にキラキラとした視線を投げかけた。
延は複雑な気持ちで,青年の握手を受けていた。
(戻ってきて……私のリラックスお休みタイム…………)
延は,心の中でそう思いつつ,遠い目をした。