私の恋人は布団です。
「は,放しなさい!」
「放したら投げちゃうでしょう!?それに,そのペン俺のじゃ無いですか」
「当たり前よ!ペンだって,元々は私のでしょ!」
「俺が貰ったのだから俺のです!」
「いいから,放しなさいってば!私はこう見えても小さい頃にお祭りの鬼の的当てで特賞を貰った経験があるわ!」
延の目には,アキラの額に300点と書かれているのが見えている。
最早,引っ込みのつかない延は,両手で隆也の腕を振り解こうとした。
(ど,どうして?思いっきり力を込めているのに……!!)
両足で踏ん張ってみても,息を吐くのをぐっと止めてみても,延の手は動かない。
手を繋ごうとした腕を払った時も,抱きついてきたときに押しのけた時も,こんな風では無かったのに。
延はアキラへの怒りよりも,隆也への動揺の気持ちの方が大きくなっていた。
その所為か,延の力は段々と弱くなる。
怯んで緩まった手から,ペンがするりと落ちた。