私の恋人は布団です。
「……何,してるんだ。羽河……と,羽河」
隆也の様子を見に来た担任教師は,向かい合って手と手を取り合う生徒を訝しげに見つめて言った。
まだ息の上がる延は,やっと自分達が手を握り合っていることに気付いた。
「……青春だなぁ……。うん。あ,良いんだ。先生は別に責めないぞ」
教師は生ぬるい視線を両者に送りながら,間延びした音を立てて教室の戸を閉めた。
「…………」
「…………」
「どうでもイイんだけどネ。いつまで手ェ繋いでンの?日が暮れちゃうよ」
また何処からとも無く現れた胡散臭い神様の一声で,二人は物凄く早いスピードで磁石が反発するようにして離れた。
(この子達からかうのは本当に飽きないなぁ……)
アキラはしみじみとそう思った。