私の恋人は布団です。

 一方,問題の延は,親友と学校の近くにあるファミリーレストランのソファに座りながら深い溜息を吐いていた。


「もう,何回目?」

「何が……?」

「タメイキ。幸せ逃げるわよ」

「そんなの吸っとけば平気よ……。むしろこれ以上何が逃げるって言うの……」

 ぐったりと体重を背凭れに掛けながら,延は投げ槍に呟いた。

「新しい布団買って貰えばいいじゃない」

「え?」

「もう寒くなるし,ずぅっと使ってて痛んでるって嘆いていたでしょう?」

 親友の提案は至極当たり前の助言だった。

 ただ,延の中で,何故かその提案は上手く嚥下(えんげ)できないような胸にジリジリと何かが這うような気持ちを引き起こした。

「うん……」

「あと,前から思ってたんだけどね」


「何よ」


「布団君ってさ,実は好みのタイプでしょ。外見は」


「…………っは?」
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