私の恋人は布団です。
 隆也は,ベッドの上に正座していた。

 延から言われた言葉は,

「いい?絶対に私の部屋から出ないで。ベッドの上で正座でもしていなさい!」

 である。

 隆也は,自分の姿を鏡で見てみる。

 ブルーのセーターは,延の愛する掛け布団のカバーの色。

 デニムのパンツは,白く清潔感がある。

(本当に,ニンゲンになれたんだ……)

 隆也は嬉しくなってしまう。

(延さんは朝が弱いから,きっと機嫌が悪かったんだ)

 隆也は楽天的に考えることにした。

(折角,ニンゲンになれたのに,延さんに会えないのは寂しい……)

 隆也は,ごろりとベッドに横になった。

 やっぱり,彼女は可愛い。

 黒髪のショートカット。

 肌も白くて,笑うと赤い唇がいっそうに際立つ。

 すっぽりと収まる体のサイズ。

 思い出しただけで,隆也は胸が熱くなる気がした。
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