私の恋人は布団です。
「寒くなってきたね」
放課後,独り図書館で外を眺めていた延に話しかけたのは何処か鋭利な微笑を浮かべた人物だった。
「そ,そうですね……」
不意に掛けられた言葉に,延は間延びした応答をしてしまう。
「延ちゃん,今日は何か予定ある?」
「いいえ」
「そう。良かった。じゃあ,デートしよう」
「……で……?」
(ジャアデートシヨウ?……ザ・デート・ショウ?)
延は修一の言葉を舌先で転がしながら,素っ頓狂な脳内変換をしてしまった。
それほどまでに,驚いたのだ。
「うん。デート。聞こえている?」
「…………はぁ」
その時,延は予想もしなかった。
自分より年上の憧れの的である修一が,思いも寄らない提案をすることを。