私の恋人は布団です。

 延は,どう修一と別れたか思い出せずに居た。


 それでも家までの道を歩いているのだから,まだ大丈夫だと自分を励ました。


 ただ,あのフレーズだけは残っている。


―「延ちゃんが俺の彼女になったら良いんだよ」



(私,嬉しい筈じゃない。だって,私の尊敬する人が……)


「モテ期だね!」


 ヒュウっと口笛を鳴らす音と,下世話な声。


「……アキラさん……。監視してたんですか?」


「ちっがうよ!だって,先刻からずーっと,“どうしよう……でも,何で修一お兄ちゃんが私なんかを……?”って。心の声が大き過ぎなんだモン」


「だから!心の中を読むのやめてもらえません……?」
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