私の恋人は布団です。
 純粋に,彼女に会いたいと隆也は思った。

 午前は耐えられたが,もう我慢の限界である。


 ふと,机の上を見ると,そこには延の写真がついている生徒証があった。

 そこには,高校名と住所があった。

 どうやら,隆也には歳相応のデータベースが頭に蓄積されているようだった。

 隆也は直ぐにピンと来た。

(延さんは,ガッコウに居る……)

 それから,隆也は偶然にも延の家人に見つかることなく,延の自宅から外に出たのだった。



 隆也は,道行く人に片っ端から生徒証を見せて歩いた。


「此処,どう行くかわかりますか?」

 隆也そのものが持つ,物腰の柔らかい調子で聞くと女性は勿論,道を聞く相手の全てが優しく教えてくれた。

 幸運なことに,延の通う高校は自宅から徒歩で10分程度の場所にあった。

 幸運なのは隆也にとってだけであるが。



「此処ですよ」

 隆也が何人かに道を聞いた後,丁度同じ方向に行くと言う女性が居たので,案内してもらったところだった。


「有り難う御座います」


 隆也はニッコリとお礼を言った。

 その女性は少しぼうっと隆也を見つめ,その後,慌てて走り去って行った。
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