学校監禁ツアー
〈翠と新〉

俺は今、翠さんといる!

そう!肝試しで!



…だけど

翠さんは全然怖がっていないみたいだ。
なんか悔しい。

「進藤くん」

翠さんが俺を呼ぶ。
「はい!なんでしょう!」

「なにか、肝試し用に仕掛けをした…?」

仕掛け…?

ここは一の七。俺らのクラスの二年三組になら黒板に落書きをしたが…

「いや、してないっすけど…」

「じゃあ、あれは…」

翠さんは携帯をとりだし目を丸くした。
「圏外…」

「翠さん、一体どうし…」

翠さんの携帯の明かりでほのかに見える、廊下。

翠さんの視線の先、廊下に少量の血がついていた。

「翠さん、これ、きっと鼻血ですよ。鼻血」

「あ。そうだ、ね。私、肝試しだから、つい…」

「大丈夫っすよ」

あれは、あきらかに鼻血の付き方ではない。まるで、“誰かに頭を殴られて出血し、倒れたときについた血のようだ”実際、男だろうか、みじかい髪の毛が血にへばりついていた。

「鼻血だしたのなら、掃除くらいして…」

「翠さん、明日やろう!明日!いったん向こう行こう!」

翠さんに髪の毛を見せたらいけない。
俺はそう思い、翠さんを反対方向へと連れて行ったのだが…

それが、悲劇になった。



一の七からすこし離れたところにあるトイレ前の渡り廊下。

そこに、かなりの出血だったとわかるような血痕があった。そして…

俺も翠さんも黙っていた。

「うそっ…うそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそ」

「待って!翠さん!」

翠さんは走って階段を降りていった。

そこにあったのは、明らかに、眞埜硲 凜の顔、だった。

胴体はない。

こんな状況で一人になるのはまずい。

なにか凶悪犯でもいるのだろうか。

俺はあわてて翠さんを追いかけた。
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