薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
「結局、許したのね」
丁度藤岡さんが去った後、丁度俺達―――櫻澤結斗と藤岡紫音―――の背景となる様に存在している花が散り若葉となった桜を眺めていた時のことだ。幼馴染であり、護衛である静寂(しじま)が声とかけてきたのである。
静寂は不機嫌な表情で俺の背後に立っていた。俺が紫音の協力を良しとしたことが気にくわないのであろう。彼女は誰よりも本家の者である自分のことを大切に思ってくれているから、より腹が立つのだろう。何せ、はたから見れば役に立たない少女にしかみえないのだから。そんな少女を協力させれば、足手纏いになるのではないか、そういう疑念が静寂の中に渦巻いているのだ。が、それはお門違いという奴なのではないだろうか。