シャクジの森で〜番外編〜
「3階の警備兵はいつもの通りに、何の変わりもなくその場にいて、私が行くと訝しげな顔をしたんですよ。

あのときは3階の警備の方も、今みたいに“選ばれた者”じゃなかったんです。

だから私が行ってもそれほど慌てる様子もなくて。



『料理長殿、おはようございます。どうされたのですか?』


『アラン様はどうかされたのですか?朝食の時間はとっくに過ぎてますが、まだ来られないので・・心配になりまして』


扉の前にいる警備兵に尋ねると『何も申しつけられていない』と首を傾げるばかりでね。


『もしかしたら、中で倒れておられるのではないですか?それともまだお目覚めでないとか・・・』


と言うと、警備兵は扉に耳を当てて部屋の中の様子を窺い始めたんです。


なにしろこんなことは初めてのこと。

いつも時間に正確な方が起きて来ないなんて、何かあったに違いないと、漸く気付いたみたいで。


もし、不測の事態があっては―――と部屋から離れるように言われて、私は扉から離れたところで見ていたんです。

ずっと。事の成り行きを―――」



料理長のふくよかな顔がどんどん曇っていく。

シリウスは固唾をのんでその表情を見つめていた。



部屋の中は・・・今のところ、何の異変も感じられない・・・。




「扉を少しだけ開けて警備兵は部屋の中を覗いたんです。

ベッドの上・・・それから床・・・。

ずーっと慎重にゆっくりと見廻していったんです。

そしたら体がふるっと震えて、息を飲むような仕草をしたんです。

その後焦ったような顔で振り向いて、私にそのままそこにいるように手で合図をしたんです。


私はもうドキドキしてしまってね。

その場から動くことが出来ませんでしたよ。

で、警備兵の方は静かに、音を立てないように扉を開け放って、ゆっくりと部屋の中に入って行きました。


目指していたのは、窓際で倒れているアラン様の横です。

アラン様は何があったのか、剣を持ったまま、こう・・・ぐたーっと倒れておられたんですよ」



料理長の体がモサッと揺れ、両手を伸ばして倒れてる様子を真似た。
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