シャクジの森で〜番外編〜
ウォルターの声が部屋の中に届いた時。

アランはシフォンのカーテンの中で、一人寝ていた。

エミリーは腕の中にはおらず、部屋の中にもいない。

何処に行ったのか。

そしてどうしてアランは再び寝てるのか。



―――料理長が廊下で身ぶり手振りを交え、長い話をしている間のこと。



アランは無言で見上げている拗ねた瞳を見つめ、どうにかワケを聞き出そうとしていた。

涙を溢すほどに早起きをしたがるワケと今の状況。

なんとなく繋がってるのは分かるが、乙女心の機微など王子のアランには全く分からない。

ましてや新妻の心の内など、宇宙の神秘―――









“アラン様、学んでおきませんと後程苦労なさいます”



もう少々教育を受けておくべきだったな・・・まさかこのようにツケがまわってくるとは・・・。



「すまぬ。私にはどうにもわからぬゆえ、頼むから教えてくれぬか?」


さっきまで拗ねていた顔が、哀しげなものに変わって行く。

瞳を潤ませ、再び横を向いてしまった。


素直に腕の中にいてくれることだけが救いだな。

本来なら、この腕から逃げ出しておっても不思議はない。

嫌われても当然な、他の者に奪われても文句は言えぬほどのことをしてしまったゆえ・・。



「エミリー?教えてくれぬのか?」

「・・・わたし・・・アラン様の妻らしく、したかったの・・・」



―――妻らしくとは・・・一体どのような・・・・。

妻らしく―――私の・・・妻、らしく・・・―――



「あの、もう大丈夫ですから。気にしないでください・・・。お腹すいたでしょう?もう朝食にしましょう。わたしね・・・」


身動ぎをし、腕の中から抜け出そうとし始めた。


「待てエミリー」


「ここで食べようと思って―――料理長さんに頼んで一緒に運んでもらったの・・・。アラン様?早く着替えた方がいいわ。遅くなってしまうもの。ね?」


にこっと微笑みを向けたあと膝の上から滑り落ち、包み込んでいる腕から出ようと、懸命に押し始めた。



「待てと申しておる」


「でも、ほら・・・もう、遅いもの―――」



か細い腕にますます力が入り、腕を解こうと懸命に押している。


そのうち脚までも動き始め、じりじりと腕の中から抜け出し始めた。

全く、何処でこんな技を覚えたのか・・・。




「エミリー、待て」
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