シャクジの森で〜番外編〜
エミリーは不思議そうに首を傾げている。


――君には分からぬだろうな・・・。

私がどれ程に君を想っておるか、など。



固く組み合わせていた腕を、ゆっくりと解いた。

解放され、自由になった身体。


にこりと微笑みを残し、我が膝から零れていく。


無意識のうちに、追いかけるように腕が伸びる。

再び腕を絡め、この場にとどめ置きたくなる。


だが、それは、今はしてはならぬ。


掌を固く握り締めた。




エミリーは、弾むような軽やかな足取りで寝室に入って行った。

それは、とても嬉しそうに。

その少し後に、ノック音とウォルターの声が、言われた通りにベッドで大人しく眠るアランの耳に、届いた。



コンコン・・・


『アラン様は此方に居られますか――――』













―――遅い―――

部屋に入って、かなりの時が経っておる。

いつもの私であれば、すぐさま様子を見に行くところだが、今はここで寝ておらねばならぬ。

焦れるが、仕方あるまい。

約束したゆえ、努力すると―――




“鼻の下を伸ばす君を”


ふと思い浮かんだ言葉。

これはレオからの書状に書かれていたものだ。


わざわざ父君を通して届けられた書状。

あれには、レオなりのおせっかいな言葉が沢山綴られていた。


今、これを思い出すとは・・・。

しかし・・・このようなこと、レオには話せぬな。

知れたら会う度毎に話のタネにされるゆえ。


漏れぬようにせねばな・・・。





・・・パタン・・・・。


カサ・・・パサ・・・



微かな衣擦れの音と、何かを置く音が聞こえてきた。

一体何を持ってきたのか?


・・・っ――こちらに、ベッドに近付いてくる。

ほんわりとあたたかなオーラがシフォンの向こうから漂ってくる。


今にして思う、君の気配はこんなに分かりやすいのに、何故先程は分からなかったのか・・・。

私はまこと、君のこととなると冷静さを欠いてしまうな。困ったものだ―――




シフォンがふわっと揺れる気配のあと、僅かに沈み込んだベッドの端。


一歩一歩近づいてくるたび僅かに沈み込み揺れるベッド。


そして体の脇まで来るとそれは、ぴたっととまった。


エミリーは何をしているのか、動きがないまま、暫く静寂な時が流れていく・・・。


――もしやこれで終わりか・・・?と思ったとき、それは不意に、始まった。
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