シャクジの森で〜番外編〜
そぉっとのびてきた、か細い腕。



肩に、ふんわりと乗せられたエミリーの小さな手。


柔らかな髪の香りが心地好く漂う。


瞳を閉じている事情も相まって、五感の全てがその手に集中してしまう。



ぽんぽんと軽く叩く小さなてのひら。



そして耳元で囁く甘い声―――









「アラン様・・・お寝坊さん・・・起きてください」






――――っ・・・・これは・・・。






「朝食が・・っきゃっ――――」







体が、勝手に動いた。


これでも抑えておったのだが。



すまぬ、どうにも我慢出来ぬ。


君が、可愛すぎるゆえ・・・。





肩に置かれていた手を優しく掴み、そっと引き寄せ、片手で背中を支え、ベッドの上に仰向けにふんわりと寝かせた。


か細い指を絡め取るようにそっと握って、ベッドの上に縫いとめた。


驚いた瞳が見上げている。




「どうしたものか・・・朝食よりも欲しいものが出来たんだが・・・」


「ぁ、ま・・待って。まだ終わってなくて。アラン様・・・あの・・・」


「分かっておる・・・キスするだけだ。それ以上はせぬ・・・」


「今は待っっ・・ん・・」




――すまぬ、止まらぬ。許せ・・・。




甘い唇を余すところなく柔らかく塞ぎ攻めたあと、啄ばむように額と頬に唇を落とした。

薔薇色に染まった頬と潤んだ瞳。

じっと見つめていると、それ以上のことまでしたくなる。


背中に手を差し入れ抱き起こした身体を、膝の上に乗せ、すっぽりと包みこんだ。


愛しくてこのまま離せそうにない。




――初めてだ。あんな風に起こされたのは。


私は幼少の頃よりずっと一人で寝起きしている。


今まで一度たりとも、寝坊などしたことはないし、母君にも起こされたことがない。


エミリー、君は私にいろんな初めてをくれるな・・・。


今暫くこうしていたいが、そうもいかぬ。


次の行動を促すように、自分に言い聞かせるように言葉にしてみた。





「さぁ、次は朝食だな。ここに運んだのであろう。大変だったな?」


「そんなことはありません。あの、アラン様。先に着替えてください。ソファの上に着替えを持ってきてあるんです。わたしが選んだのですけど・・・」


“大丈夫かしら”と不安そうに見上げてくるアメジストの瞳。


シフォンの外に出ると、きっちりと折りたたまれてある服と猫脚テーブルに並べられた朝食が目に入った。


見たことがない、いつもと違ったメニューが乗せられている。



「これ・・わたしが作ったんです」
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