シャクジの森で〜番外編〜
こんな風にアランが焦る少し前。

場所は変わって、3階の警備室の中。


ここでシリウスとウォルターは机を挟み、向き合っていた。





「はい、確かに・・・。ご苦労様。休暇を貰っていたのに、呼び出して悪いと思っています。ですが、これがないとパトリック様に報告が出来ませんので」


「いえ、溜めていた私が悪いのです。では、団長殿、これにて失礼致します」


「良い休日を」





溜まっていた報告書をウォルターに手渡し、退室したシリウスは正室の扉を見やり、これから一日何をしようかと考えた。

毎日毎日護衛をしているのに、急に“休め”と言われても正直どう過ごしていいか分からない。


いつもより遅めの登城。

普段通りに3階に来た際、こっそりと部屋から出てきたエミリー様を見つけてしまった。

習慣というものは恐ろしい。

後をついて行こうと、自然に動き出す体を必死で止めた。

足を忍ばせ、いかにも“内緒の行動です”的な様子に、何処に行くのか非常に気になったが仕方がない。



“明日は護衛は必要ない故、休むが良い。たまにはゆっくりしたいであろう”


とアラン様より申し渡されているのに、背いたと分かれば後でお咎めを受けてしまう。

最悪任を解かれてしまうかもしれない。

それだけは絶対に避けたい。

体力が許す限り、ずっとエミリー様の護衛であり続けたいと思っている。

どんな敵からも命を賭して必ず守ると決めた。


アラン様の妃となられてもこの気持ちは変わらない。


あの日から―――






――ガタ・・・ガタッ・・・ゴン・・キィ・・・パタン・・・・




正室の扉がノロノロとぎこちなく開き、何かがぶつかるような音を数回させ、エミリー様がゆっくりと出てきた。


片手にトレイを持ち片手に保温ポットを抱き、ソロソロと歩く様は見るからに不慣れで、今にも落としそうでとても危なっかしい。




「ん・・・これ、思ったよりも大変だわ・・・階段降りられるかしら」


『・・・っ・・・!』



―――エミリー様・・・?

あの状態でよく扉を開けられたものだ・・・。


それに今、部屋の中からアラン様の焦ったような声が聞こえた。


休暇中だが、そんなことは言っていられない―――




「エミリー様。それはどうされたのですか。その様に沢山持たれては・・・――――っ、危ない!」
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