シャクジの森で〜番外編〜
「・・っ!きゃぁぁっ」


背後から急に声をかけたのが悪いのか、驚いてわたわたと動く腕の中から滑り落ちていく保温ポット。


シリウスは急ぎ駆け寄り、それを寸でのところで支え受け、斜めになったトレイをしっかり下から支えた。

トレイの上でカチャカチャと音を立てて踊る食器が静かになり、危うく大惨事を逃れたことにホッとしたエミリーは、肩を落としてフゥと一息ついた。


アメジストの瞳がシリウスを見上げ、柔らかな微笑みを漏らす。




「ありがとう。シリウスさん、ごめんなさい。やっぱりこんなにたくさん持つのは無謀だったかしら」


「その通りで御座います。このようなことは使用人にお申し付け下さい」


「使用人に頼んだら意味がないわ。これはわたしがやらないとダメなの」


「ですが、お怪我をされては・・・危険ですから、このポットは私がお持ち致します。それくらいは宜しいでしょう。それで、どちらに行かれるのですか?」





「おいシリウス、今日は休みだろう?何をしているんだ。エミリー様、悲鳴が聞こえましたがどうされたのですか?」


二人で廊下で話していると、心配げな顔をして警備兵たちが寄ってきた。


「お騒がせしてごめんなさい。これを落としそうになったの」



エミリーがトレイを見せると、皆、興味津々な様子で覗き込んだ。



「エミリー様、コレは何ですか?見たことがありません。もしかして、エミリー様が作られたとか・・・ですか?」


「えぇ、そうなの。アラン様に食べて貰おうと思って作ったんです」


エミリーは皆に覗き込まれ、恥じらうように頬を染めて微笑んでいる。



「本当ですか!?」


「・・これは美味しそうですね・・・。もしかして、食べないのですか?でしたら私に―――」


「え・・・?」


「――っ!お前は何を言ってるんだ!」


「じ・・冗談だよ。本気にするな」



シリウスが鋭い瞳で警備兵の顔を見据え、もう一言と思い口を開きかけたところに、鋭い声が廊下に響いた。



「そんなところで固まって何をしているのです。任務中でしょう。これは・・エミリー様、どうかなさいましたか?」


「あ、ウォルターさん、おはようございます。これを下に持っていくところなの」


「それは何ですか―――?」


ウォルターは興味深げにトレイを覗き込んだ。
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