シャクジの森で〜番外編〜
正室の部屋の中ほどにある、綺麗に磨きあげられた猫脚テーブル。

その上に長方形のシンプルなベージュのマットが二つ敷かれ、綺麗な花模様のカップとほんわりと湯気を出す朝食が乗せられた。

朝食と呼ぶにはもうずいぶん遅い時間。

温めなおしたコーヒーも花柄のカップに注がれ、甘く香ばしい香りと重なり、空っぽの胃袋を刺激する。



「――はい、アラン様どうぞ・・・」


か細い指がそっと差し出したのは、シロップの入った小さなカップ。

遠慮がちな声と何故か少し震えている指先。



―――何故震えておる。

もしや・・緊張・・しておるのか?

それならば、実は私もだ・・・。

たかが朝食といえど、料理人以外の者が作ったものを食べるのは初めての経験だ。

しかも、愛する妻、エミリーが作ったものだ。

こんなことは父君も経験しておらぬだろう。


して、コレは何だ―――?



「・・・教えよ。これは・・どうすれば良いんだ?」

「ぁ・・これにかけて食べるんです。けど・・・」


「けど・・・?」


「アラン様は甘いものは好きではないでしょう?コーヒーはいつもブラックだもの。だから、ムリには―――」



そう言いながら、カップを覆い隠すようにてのひらを載せている。

今にもカップごと引っ込んでいきそうな綺麗な手。

逃さぬように素早く捕えて包み込んだ。



―――何故下げようとしておる。


「待て。下げるでない。誰がそんなことを申した?確かに、甘いものの類は普段食べない。だが、嫌いというワケではないぞ。それに、これはすべて君が用意したものであろう?」



言いながら、カップを抑えている指を一本ずつ離していく。

隠されていたてのひらの中のカップが露わになる。

それを奪うようにして取った。



「えぇ・・・でも、アラン様にとってはすごく甘いかもしれないわ。これに十分味が付いているから、やっぱり、やめた方がいいと思うの」


「何度も申しておるであろう?君の用意した物は、私にとって君そのものゆえ、何一つ取りこぼさぬと」
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