シャクジの森で〜番外編〜
“私にとってコレは君だ。もう、他の誰の目にも触れさせぬ。それにこの空腹感。これを持っていないと、私は君を食べたくなる。それでも良いのか?”
“君が作ったものを、捨てられるわけがないであろう”
「さぁ、早く座るが良い」
椅子を引いて座る様に促し、いつものように目を瞑り、祈りを捧げる。
――思えば、朝から長かった。
こんなに食事が待ち遠しいと思ったのは、生まれて初めてだ・・・。
トロリとしたシロップ。
・・・確かに甘そうだ。
ナイフを差し入れると蜜がジュワッと沁み出る。
早速ひとかけらをフォークで刺し口に運んだ。
・・そんなアランの様子を、向かい側から見つめるアメジストの瞳。
固唾を飲んで見つめている。
白い手は、高まる鼓動を抑えるかのように、胸にぎゅっと押し当てられている。
ひとかけらが口に運ばれていくのを、少し不安そうに、じっと見つめている。
息を止めているかのような、緊張感。
とても食事には手をつけられそうにない・・。
そんなエミリーの様子に気付かず、食事を進めるアラン。
―――――傍目には冷静に見えたであろうな。
私はずっと、待ち望んでおった。エミリーの手作りの朝食。
目の前のフォークの先を暫く眺めた後、ゆっくりと口に入れた。
感慨もひとしおに、口に含んだひとかけら。
それから、あたたかく甘くしっとりとした食感がじんわりと広がっていく。
それは、まるでエミリーそのものの味。
君はいつも、柔らかく甘く優しく、私を満たしてくれる。
政務で尖った心を癒し温めてくれる。
柔らかな微笑み、凛と通る涼やかな声。
名前を呼ばれるだけで心が温かくなる。
知らぬであろうが、私は、毎日君に救われておる。
これはそんな君の味が、する・・・。
―――こんな食事が出来るとは、私は、幸せ者だな―――
アランは瞳を閉じ、じっくりと幸せを噛みしめた。
すっかり夢中で食し、気付けば皿の上はあっという間に空になり、あとは少しのコーヒーを残すのみになっていた。
「―――・・すまぬ。話もせずに夢中になっておった。ご馳走であった―――美味しかったゆえ、いつかで良い、また作ってくれるか?・・・・どうした―――エミリー?―――」