シャクジの森で〜番外編〜
―――16の歳に行われた教育。


成長してゆくに当たり、年齢に合わせた性教育が行われる。


あの時、真面目な顔付きの講師が、そう申しておったな。

まだ若き頃ゆえ、これは必要ないものだと思い、知識として吸収するのみに留め、適度に相槌を打っていたが。


婚姻前は君を守るため、婚姻後は執務が忙しかったゆえ、二人で出掛けることなど一度もなかったな。

デートという言葉など浮かばぬのは、やはり私が王子だからか。




「そうだな。城下では初めて、だな」



―――待て・・城下では・・とは?



自分で発した言葉にふと疑問が湧く。


城下以外ならば、デートしたことがある、のか?

いや、しかしそんなことは―――


試しに想いを口にしてみる。



「確認して良いか?城内では、毎日こうしておることがデートになる、で合っておるか?」


腰に手を当てて引き寄せながらそう尋ねると、首をふるふると横に振った。



「違うわ。あの夜のこと、なんですけど」


と、呟いて上目遣いに見上げてきた。


拗ねたような瞳で唇を尖らせている。



―――あの夜とは、いつの夜のことか。

君に初めてキスをした日のことか、それとも?

私にとっては、毎日がデートのようなものなのだが。



「あの日、アラン様、森に連れて行って下さったでしょう?」




見つめるアメジストの瞳が、覚えてないの?と問いかけてくる。



無論、覚えておる。

あの日のことは、忘れるわけがない。



―――幻想的な新月の夜のショー―――


ラステアの夜の湖が、あの光景を連想させた。


君に見せたくて、無理をおして帰城したあの日。


瞳を閉じると、今も鮮明に思い出される。




“・・・これくらいは、許せ”



「あの夜のことは、私には忘れられぬ日となっておる―――君は知らぬだろうが・・あの後、眠った君の髪に、私は何度もキスをした。腕の中で無防備に眠る君が愛しくて堪らなかったゆえ・・・」
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