シャクジの森で〜番外編〜
沢山の店が立ち並ぶ市場通り。
平日の昼間というのに、たくさんの人で賑わうギディオン王国一番の繁華街。
大きな噴水のある広場には、屋台が立ち並び、人々が楽しげに商品を物色している。
物とお金が手から手へ忙しげに行き交い、売り子の声が威勢よく辺りに響く。
時刻は丁度お昼時。
噴水広場の脇のオープンカフェは全ての席が埋まり、二人のウェイトレスが店内とテーブルの間を早足で何度も往復している。
向かいの喫茶も席待ちの行列が出来、買い物袋を抱えた御令嬢たちが楽しげにお喋りをしている。
その後ろでは、一人待つ髭の紳士が雑誌に目を落としていた。
そんな賑わいを見せる市場通りの片隅に、ゆるっと停まった小ぶりの馬車。
女性用の馬車なのか、ぴかぴかに磨き上げられた白い車体には、薄紫の薔薇が一輪描かれている。
降り立ったのは、帽子をかぶった貴族の若い紳士と、金髪の美しい御令嬢。
紳士は御者にチップを渡し、馬車止まりで待つようにと申しつけ、流麗な所作で御令嬢に手を差し出した。
御令嬢は傷も沁みも何一つない綺麗な白い手を重ねた後、紳士を見上げて話しかけている。
貴族の紳士にしては似つかわしくない武骨な人指し指。
それが御令嬢の面前に差し出される。
目深に被っていた帽子を少し上げた際、垣間見えたのは少し眉を寄せた厳しい顔。
深いブルーの瞳も真摯な色に染められ、何か注意事項でも話しているのだろうか、ご令嬢も真面目な顔をして素直に頷いている。
紳士が口元を緩め指を下ろすと、少し甘えたような表情になった御令嬢が話しかけた。
すると、再び厳しい表情に戻る紳士。
二言三言会話を交わしたあと、紳士が諦めたように一つ息を吐き、口元を僅かに緩ませ、か細い手をきゅっと握った。
御令嬢が嬉しそうに微笑んで見上げ、手を引かれるままに人で賑わう大通りへと歩みを進めた。
―――その後ろ姿を見つめる鋭い瞳。
息を潜め、数メートル離れたところの建物の影に体を隠し、様子を見ている。
格好の獲物を見つけたように唇を舐めるその姿は、一人ではない。
向かいの店の軒先にももう一人、いる。
腕の中に入れられず、繋がれてるのは手だけなのがやや不満そうではあるが、気遣いつつ堂々と歩く紳士と楚々とついて行くご令嬢。
その姿が視界から消えそうになったあたりで、互いに目配せをし、コソコソと歩き始めた。
何をしていなくても目立つ二人。
その後を追いかけるように、慎重に―――
平日の昼間というのに、たくさんの人で賑わうギディオン王国一番の繁華街。
大きな噴水のある広場には、屋台が立ち並び、人々が楽しげに商品を物色している。
物とお金が手から手へ忙しげに行き交い、売り子の声が威勢よく辺りに響く。
時刻は丁度お昼時。
噴水広場の脇のオープンカフェは全ての席が埋まり、二人のウェイトレスが店内とテーブルの間を早足で何度も往復している。
向かいの喫茶も席待ちの行列が出来、買い物袋を抱えた御令嬢たちが楽しげにお喋りをしている。
その後ろでは、一人待つ髭の紳士が雑誌に目を落としていた。
そんな賑わいを見せる市場通りの片隅に、ゆるっと停まった小ぶりの馬車。
女性用の馬車なのか、ぴかぴかに磨き上げられた白い車体には、薄紫の薔薇が一輪描かれている。
降り立ったのは、帽子をかぶった貴族の若い紳士と、金髪の美しい御令嬢。
紳士は御者にチップを渡し、馬車止まりで待つようにと申しつけ、流麗な所作で御令嬢に手を差し出した。
御令嬢は傷も沁みも何一つない綺麗な白い手を重ねた後、紳士を見上げて話しかけている。
貴族の紳士にしては似つかわしくない武骨な人指し指。
それが御令嬢の面前に差し出される。
目深に被っていた帽子を少し上げた際、垣間見えたのは少し眉を寄せた厳しい顔。
深いブルーの瞳も真摯な色に染められ、何か注意事項でも話しているのだろうか、ご令嬢も真面目な顔をして素直に頷いている。
紳士が口元を緩め指を下ろすと、少し甘えたような表情になった御令嬢が話しかけた。
すると、再び厳しい表情に戻る紳士。
二言三言会話を交わしたあと、紳士が諦めたように一つ息を吐き、口元を僅かに緩ませ、か細い手をきゅっと握った。
御令嬢が嬉しそうに微笑んで見上げ、手を引かれるままに人で賑わう大通りへと歩みを進めた。
―――その後ろ姿を見つめる鋭い瞳。
息を潜め、数メートル離れたところの建物の影に体を隠し、様子を見ている。
格好の獲物を見つけたように唇を舐めるその姿は、一人ではない。
向かいの店の軒先にももう一人、いる。
腕の中に入れられず、繋がれてるのは手だけなのがやや不満そうではあるが、気遣いつつ堂々と歩く紳士と楚々とついて行くご令嬢。
その姿が視界から消えそうになったあたりで、互いに目配せをし、コソコソと歩き始めた。
何をしていなくても目立つ二人。
その後を追いかけるように、慎重に―――