シャクジの森で〜番外編〜
大通りを歩く二人。

途中で何度も立ち止まり、立ち並ぶ屋台店の中を覗くご令嬢をたしなめるように優しく引き寄せる紳士。

ご令嬢は微笑んでそれに答え、歩き始める。

傍目には、貴族の若いカップルが仲睦まじく買い物を楽しんでいるように見える。


お忍び作戦は、大成功。

今のところは―――・・・




―――初の城下。


観光も兼ねるため、大通りをゆっくり歩いていく。

昔風の古い造りの店やしょうしゃな造りの店、市場通りには歴史の深い店も多々ある。

それらの外観を眺めるだけでも楽しい。

エミリーは時々立ち止まってはじっくり眺め、私のエスコートに楚々とついてくる。


そんな彼女に道行く青年やすれ違う者が見惚れ、熱い視線を送ってくる。

私がいるにもかかわらず、話し掛けてくる者までいた。



ふわりと漂う優しいオーラ。

身に着けているのはシンプルな白のワンピース。

髪は後ろで一つに纏め、アクセサリーの類は革細工の髪留め一つ。

日頃の王子妃としての姿からは想像も出来ぬほどのシンプルさ。

それでも人目を引いてしまう。



――帽子をかぶせれば良かったか・・・。



店先に並ぶ花を見ているか細い腕をそっと引き寄せた。



「・・エミリー、このままでは遅くなる。すまぬが、少々急ぐぞ」


「はい。・・・・あっ、でも・・アラン様、待って。あのお店可愛いわ。・・・見てきてもいいですか?」



手をクイクイ引っ張り、留まるようアピールするエミリー。


向けられた視線の先にあるのは、噴水広場の数台の屋台。


その中に、布と小さなガラス玉で作られた花が沢山置いてある屋台がある。

色彩豊かに飾られたそれは、他に比べ道行く人の目をぐっと惹きつける。


客の仕草から察するに、並べられている商品は髪に着けるものとして売られているらしいが・・・。



「・・あちらの屋台店だな?君が申しておった購入したいものとは、あの花か?」

「違うの。あれじゃないんですけど・・・。以前メイに聞いたの。今、城下ではあの花飾りを髪につけるのが流行ってるらしいわ。ね、アラン様見てもいいでしょう?」



――流行り・・・確かに周りを見れば、貴族のご令嬢らしき者から街娘まで大きな花飾りを髪につけている。

あちらで売ってるものと同じだ。


エミリーも身に着けたいのであろうか・・・。

しかし、あのような安価な物は、王子妃が身に着けるようなものではない。


それにあのような場所で留まればさらに人目を集め、騒ぎを起こしかねぬ。


ここは早く立ち去ったほうが良い。

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