シャクジの森で〜番外編〜
決意も新たに、少し離れた場所から見守っていると、アランがエミリーに近付いていくのが見えた。


―――今のところは順調のようです。

このまま何事も起きなければいいですが―――








そんなウォルターがいることに、気付かないアラン。


厳しかった表情が、ふと柔らかくなる。

視線の先には、花飾りの清算をする愛しい妻の姿。




――ん?・・・どうやら、終わったようだな――


「エミリー、待て・・・」


お腹のあたりにそっと腕をまわして引き寄せ、店員から差し出された袋に手を伸ばすか細い腕を下ろさせた。


背後から急に伸びた腕と声に驚き、小さな声を上げるエミリー。



――すまぬ、また驚かせてしまったな・・・。



渡すべき手が消え、袋を持つ店員の手が行き場を失い、空を舞った。


戸惑う店員に此方に渡すよう合図し、後ろから手を伸ばして受け取った。

エミリーは不思議そうに此方を見上げている。

唇が僅かに動き、アラン様?と呟いた。



「君は受け取らなくとも良い。これは夫である私の役目であろう。荷物は私が持つゆえ」


「ありがとうございます、アラン様」



見上げてくる瞳がふと僅かに曇り、眉を寄せて、何か申し訳なさそうな顔になった。

何を思っておる?




「ぁ・・・あの・・・ごめんなさい。随分、待ったのでしょう?」


「いや、そんなことはない。何故謝る?」


「だって、アラン様。少し怖い顔してるんですもの・・・。だから・・・です」


「すまぬ。これは、君のせいではない。だから謝らなくとも良い・・・。少々周りに警戒しておったゆえ―――それにしても、随分買ったな?」



袋の中に花飾りが五つほど入っている。

エミリー一人の分にしては多い。



「えぇ、メイとナミの分もあるの。お土産に、と思って」


「そうか、土産か。君らしいな―――で、あとは、君の買いたいものだが、何だ?まだ聞いておらぬぞ」



そう尋ねると、目を見開いたあと恥ずかしそうに俯いてしまった。

また何か隠しておるのか?



「エミリー、隠し事はなしだ。それに、申してくれねば連れて行けぬぞ?」


「ごめんなさい、隠してるわけではなくて・・・。あの、これは内緒の話なんです。だから言いにくくて・・・。えっと、アラン様、耳をかしてください・・・」
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