シャクジの森で〜番外編〜

白と青のパステルカラーで彩られたテーブルウェア。

ケーキセットと一緒に飾られたスミレ色の素朴な草花。

雲の彫刻が施された、スミフ特製のフォーク。


これらすべてが、紅葉の景色とともに、エミリーの心をしっかり捉える。

フォークを見つめ、ケーキを口に運び、甘くとろけるような笑みを見せる。



温かな日差しの中、スミフの申すところの“例のもの”を味わう。

ソラから受け継がれた、特性のブレンドコーヒー。

私だけの配合で淹れられたもの。

程良い苦みと後に残る甘みが絶妙な味わい。


こうして誰に気兼ねをすることなく心を無にし、エミリーとともにゆるりと寛ぐ。

ここでは今まで一人で過ごしておったが、こんな風に愛する者といると、眺める景色もコーヒーの味もまた違うものに感じられる。


いいものだな・・・。


何者にも侵されない幸せな時が、過ぎ行く。




カップを置きながら、テーブルの上に目をやる。

白い皿に乗せられた、アトリエ特製のマーブルケーキ。

ここの売りは、季節の素材を生かした素朴な味だ。


サリーの作るこれは人気があり、西の外れに位置する店であれど、国中から人が訪れ、途絶えることが無い。

店の中は常に満席で、入り口に置かれたケースは、午後には『sold out』の札がかかる。


そのため、サリーは絶え間なくケーキを焼き、コーヒーを淹れる。

求めてくる客のために。



今日のケーキは白と黄色のマーブル模様。


多分カボチャが使用されているのだろう、小さく刻んだものが乗せられ、こんがりとした香りを漂わせている。


脇にはクリームと3種類の赤い木の実とミントの葉が添えられ、見た目も美しい。





―――これは・・・。


このケーキは、見た目が少々違うが。


初めてここで食したものと同じだ。


サリーの祖母ソラに出会った、幼きあの日に。
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