シャクジの森で〜番外編〜
――――――・・・変わった者。
初めて会った時の、ソラの印象だ。
「・・・アンタ、何蹲ってんだい。分かった。お腹空いてるんだろ?こっちにおいで」
市場通りの路地の片隅で、身を隠すように縮こまって座り込んでいると、少し掠れた声が上から降ってきた。
顔を上げると、逆光に浮かび上がった少しふくよかな身体がそこにあった。
その者はソラと名乗り、皺だらけの手を差し出し一緒に来いと申した。
こんなところに座りこむ得体の知れない子供に気安く声をかけてくるとは、変わった者だ。
差し出された手を見ながら、そう思った。
次第に逆光にも目が慣れ、その者が白髪の女性だとわかった。
「―――私に構うな」
「ちびのくせに、何強がってんだい。辛そうな顔してるよ。子供は大人の言うことを聞くもんさ。さぁ、おいでよ」
ここで、はからずもお腹がぐぅーとなってしまう。
朝食べたきりで城を出てきたため、確かにお腹は空いていた。
「ほら、今の聞こえたよ。さぁ、早くこっちに来な」
にこにこと笑う初老の女性に、何故か逆らうことが出来ず、黙って手を取った。
変な装飾品がたくさん飾られた珍妙な店に連れて来られ、小さな丸い椅子に座らされた。
細長いテーブルに並べられた皿の上に、たくさんの菓子らしきものが乗せられており、ここが店屋だということはすぐに分かった。
「ほら、これ食べな」
紙に包まれた小さなパンのようなものを手渡された。
四角く切られたそれは、白と黄色の2つの色がぐるぐると巻き、綺麗な模様を描いていた。
「見た目は変だけど、これは美味しいんだよ」
見たことが無く、変わったもの、としか思えなかったそれを躊躇しながらも口にすると、ほのかな甘さが広がりほんわりと心があたたかくなった。
優しい味がした。
「・・・美味しい・・・これ、美味しいぞ。ソラ」
その時は分からなかったが、ソラのケーキに、経験したことのない『母の味』というものを感じたのだろう。
涙が知らずに溢れた。
「あらまぁ・・アンタ、泣いてるのかい?」
言葉と一緒に、頭にふわりと温かいものが乗せられた。
見上げると皺だらけの優しい微笑みがそこにあり、ざらざらとした赤切れのある、御世辞にも美しいといえない手が、くしゃりと頭を撫でていた。
「・・・泣いてなど、いない―――」
「はい、はい。分かったよ」
ソラはそのまま涙が落ち着くまで優しく頭を撫でてくれた。
「・・・ソラ、またここに来ても良いか」
勇気を出して、帰り際に問いかけると、ソラはにっこりと笑った。
「あぁ、コレが気に行ったのかい?・・・いいともさ。またおいでよ。こんなのでよかったら、いつでも食べさせてあげるよ」
そのソラは、今は、遠い空の上だ―――――・・・。
初めて会った時の、ソラの印象だ。
「・・・アンタ、何蹲ってんだい。分かった。お腹空いてるんだろ?こっちにおいで」
市場通りの路地の片隅で、身を隠すように縮こまって座り込んでいると、少し掠れた声が上から降ってきた。
顔を上げると、逆光に浮かび上がった少しふくよかな身体がそこにあった。
その者はソラと名乗り、皺だらけの手を差し出し一緒に来いと申した。
こんなところに座りこむ得体の知れない子供に気安く声をかけてくるとは、変わった者だ。
差し出された手を見ながら、そう思った。
次第に逆光にも目が慣れ、その者が白髪の女性だとわかった。
「―――私に構うな」
「ちびのくせに、何強がってんだい。辛そうな顔してるよ。子供は大人の言うことを聞くもんさ。さぁ、おいでよ」
ここで、はからずもお腹がぐぅーとなってしまう。
朝食べたきりで城を出てきたため、確かにお腹は空いていた。
「ほら、今の聞こえたよ。さぁ、早くこっちに来な」
にこにこと笑う初老の女性に、何故か逆らうことが出来ず、黙って手を取った。
変な装飾品がたくさん飾られた珍妙な店に連れて来られ、小さな丸い椅子に座らされた。
細長いテーブルに並べられた皿の上に、たくさんの菓子らしきものが乗せられており、ここが店屋だということはすぐに分かった。
「ほら、これ食べな」
紙に包まれた小さなパンのようなものを手渡された。
四角く切られたそれは、白と黄色の2つの色がぐるぐると巻き、綺麗な模様を描いていた。
「見た目は変だけど、これは美味しいんだよ」
見たことが無く、変わったもの、としか思えなかったそれを躊躇しながらも口にすると、ほのかな甘さが広がりほんわりと心があたたかくなった。
優しい味がした。
「・・・美味しい・・・これ、美味しいぞ。ソラ」
その時は分からなかったが、ソラのケーキに、経験したことのない『母の味』というものを感じたのだろう。
涙が知らずに溢れた。
「あらまぁ・・アンタ、泣いてるのかい?」
言葉と一緒に、頭にふわりと温かいものが乗せられた。
見上げると皺だらけの優しい微笑みがそこにあり、ざらざらとした赤切れのある、御世辞にも美しいといえない手が、くしゃりと頭を撫でていた。
「・・・泣いてなど、いない―――」
「はい、はい。分かったよ」
ソラはそのまま涙が落ち着くまで優しく頭を撫でてくれた。
「・・・ソラ、またここに来ても良いか」
勇気を出して、帰り際に問いかけると、ソラはにっこりと笑った。
「あぁ、コレが気に行ったのかい?・・・いいともさ。またおいでよ。こんなのでよかったら、いつでも食べさせてあげるよ」
そのソラは、今は、遠い空の上だ―――――・・・。