シャクジの森で〜番外編〜
過去に思いを馳せつつ前を見ると、エミリーの幸せそうな表情が目に入る。

私も、ソラにこのような顔を見せていたのであろうか。



「アラン様、これ、とても美味しいわ。ほのかに甘くて、しっとりしてて。これは、城下でも人気があるんでしょうね」


普段から城の中で職人の作る甘味を食しておるが、このような素朴な味わいのものはない。

さぞかし新鮮であろうな。



「サリーは、自称国一番の菓子職人ゆえ・・・味も見た目も良いであろう。・・・私の分も食べるが良い。君は朝食も少ししか食べておらぬゆえ――」


「ぁ、ぇっと・・・嬉しいけれど、ダメです。それは、アラン様が食べてください・・・サリーさんのケーキ、久しぶりなのでしょう?・・・ね?」


私が差し出した皿を、やんわりと押し戻す手を握り、もう一度エミリーの方へ差し出す。


「私は、君にもっと食べて欲しいのだが・・・」




・・・シャン・・・シャリン・・・


テラスに鈴の音が響く。

と、同時にサリーの明るい声が聞こえてきた。



「ちょっと、アンタ!さっきの、聞こえたよ。自称はないだろ?自称は。それに、なに人前でいちゃいちゃしてんだい。見てるこっちが照れるよ」



サリーはテーブルの脇まで来ると、意味ありげににんまりと笑った。

唇が、サッキノミテタヨ、と動く。


「でもアンタがそんな風になるとはね・・・意外だよ。ま、しょうがないか。王子妃様、こんなに可愛いらしいもん。人に取られないか、ヤキモキするだろ」


「・・・サリー、ヤキモキとは、何だ?」


予想もしない、これまた意味のわからない言葉をかけられ、握り締めていたエミリーの小さな手を、眉を寄せつつ離した。



「アハハ!わかんないなら、それでいいよ」



愉しげな声を出したサリーは、先程と違う姿をしている。

赤地に黒レースのドレス。

えりぐりが広くあき、豊満な胸の谷間がチラリと見える。

赤地のスカートの上に黒いレース生地が幾重にも重なっていて広がり、とても魅惑的な衣装だ。

両手首には鈴が取り付けられ、動くたびにシャンシャンと鳴る。



「サリーさん、とても素敵だわ。その衣装はもしかして、ダンスのものですか?」
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