シャクジの森で〜番外編〜
「そう。ささやかだけど、私からの結婚祝い。ジプシーのダンスだけど、見てくれるかい?」


「えぇ、嬉しいわ。サリーさん、是非見せてください」






サリーは部屋の中を振り返り見ると、腰に手を当ててイライラと呟いた。


「全く、もう、何やってんだろね。スミフは」


部屋の奥で椅子に座り、ゆるゆるとヴァイオリンの弦を弄っているのが見える。

手に持っているのはさっき飾り棚から引っ張り出した特別なものだ。



スミフ曰く“貴重なヴァイオリン”で


“奏でる旋律の深き味わいはこの世に二つとない”らしい。


音の違いなんて、素人の私には全く分からないけどね。

とりあえずとっておきの楽器ってことは分かる。


だけど、全く、何をもたもたしてんだろうね。



「スミフ!準備はまだかいっ」


「あぁ・・・もう少し待ってろ」



日頃から手入れしとかないのが悪いのさ。

あれで5本の指に入る楽士だとは、聞いて呆れるよ。

こんな可愛い王子妃様待たせるなんて。



「ったく、何やってんだろね。王子妃様、待たせてごめんね」


「いいえ・・・ぁ、サリーさん、少し・・・聞きたいことがあるんですけど・・・いいですか?」


「なんだい?私で分かることなら何でも答えるよ」



そう言うと、アラン王子をチラッと見た後立ち上がって、私の手を取ってテラスの隅に引張って行く。




何だろうね、内緒の話なのかな。


アラン王子は・・・こっちをじっと見てる。

ちょっと顔が怖いね・・・気のせいか、周りの空気が揺らいで見えるよ。

そんなに心配なのかね。





背の低い王子妃様が背伸びをして来たから、私も少し屈んで耳を寄せてみた。

ほわっといい香りが漂い、甘い声が小さく届く。

その内容に一瞬驚いてしまい、まじまじと顔を見つめてしまう。




王子妃様、そんなことを気にしていたの・・・。
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