シャクジの森で〜番外編〜
「・・そう。わたし、買い物しなくちゃいけないんだったわ・・・。アラン様・・・わたし、おねがいが一つ、いえ、二つあるんですけど・・・」


「何だ?何でも申せ」


「アラン様はお忙しいから、いつかでいいの。いつかまた、ここに連れて来てください」

「そうだな。近いうちにまた来よう。次回はもっとゆっくり過ごせるように致す。だから、そのような寂しげな顔をしなくとも良い。・・・もう一つは何だ?」


「もう一つはスミフさんに、なんですけど・・・」


テーブルの上に目をやって、呟いた。

そこにはスミフお手製のフォークがある。


「忙しそうだからダメかしら―――」







「――――もちろん、良うございます。王子妃様の頼みとあれば、何を置いても、先に仕上げさせて頂きます。確か、御印は薔薇の花でしたか?」


「えぇ、そうです。良くご存知ですね。もしかして、薔薇の花を入れて下さるのですか?」


「はい、心を込めて彫らせていただきます」


「・・・嬉しい。ありがとうございます、スミフさん。でも、そんなに急がなくていいですから。急ぎのお仕事があるのでしょう?」



壁に掛けられたヴァイオリンと机の上の木の破片を見つめるエミリー。

スミフは自作の木のフォークを体の前にかざし、首と掌を横に振った。



「いいえ、大丈夫でございます。これは、ご結婚のお祝い第2弾に致しますから。王子様それで宜しいですか?」


「宜しく頼む」


「良かったねぇ、王子妃様――――でも、あんなのが気に入ったのかい?」



変わってるねぇ、と呟くサリーの腕を引張りながらスミフが咳払いをして窘めた。

急に引っ張られてよろけるサリー。


「イタタ、もう、子供じゃないんだから、引張ることはないだろ?」


睨むサリーの腕をさらに引張る。

もうっ口で言いなよ、口で言ってもわからんだろう、とひとしきり争いを始める。


その様子を見て、エミリーはクスッと笑みを漏らした。


―――二人とも変わらずだ・・・。

王子である私の前であるにもかかわらず平気で争いを始める。

昔と変わらぬ態度、付き合いをしてくれる。

喧嘩をしても、二人は仲の良い親子だ。

エミリーにもそれが分かるのであろうな―――



何度かの抵抗の末、スミフの手を振り払うことに成功したサリーが、息を乱しつつエミリーに向き直った。



「ごめん、変なとこ見せたね」


「えぇ。・・でも、仲がいいんですね。スミフさんのフォーク、とても可愛くて一目見て気に入ったの。このお店も、もちろんサリーさんのことも大好き。わたし、サリーさんのことお友達と思っても、いいですか?」
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