シャクジの森で〜番外編〜
首を傾げて青い瞳をじっと見上げるエミリー。

サリーの頬が赤く染まっていく。

かなり動揺しているのか、細く長い指をあてもなく空に舞わせた。



「・・・あ・・っと・・・いやだよ。照れるねぇ。もちろんいいに決まってるだろ。だけど、そんなこといちいち聞かなくていいんだよ」



エミリーは動きまわるサリーの手を捕まえて、キュッと握った。

サリーとスミフの顔を交互に見つめて、にこりと微笑む。



「わたし嬉しいの。サリーさんみたいな人に出会えて。スミフさんもとても素敵な方だわ。お二人ともっと仲良くなりたいの」


「あぁ、もうっ。可愛いねぇ・・・私も、王子妃様が大好きさ―――」


サリーは握っている優しい手をそっと振りほどき、ぎゅうぅと華奢な身体を抱きしめる。

エミリーも戸惑ってはいたものの、サリーの背中に腕をまわして抱きしめ返した。

暫くそのままの状態が続く。




長針に白い雲が貼り付けられた掛け時計を見やった。

―――16時か・・・。

か細い腕を取り、サリーの背中から離した。



「・・・エミリー、良いか?もう、行かねばならぬ」

「はい、アラン様」


「そうだよね、もう、行かないとね・・・」


呟きつつサリーが名残惜しげに腕を離す。

漸く解放された身体に腕をまわし、傍に引き寄せた。



「あ、ねぇ、コレ持っていきなよ。私の作ったケーキ、土産用に包んだんだ。ほら、コレ・・・アンタ持ちなよ」


言いながら、空色の紙に包まれた箱を袋の中に入れた。


「さっきのとは違うんだ。まだ誰も食べていない、空のアトリエの新作。・・・ねぇ、王子妃様。今度は一人で来るといいよ。ほんと、あの話もしたいし。ね?私は、こんな無愛想な顔よりも、可愛い王子妃様の顔をもっと見たいわ。ねぇ、スミフ?」


言葉を投げられたスミフを見やると、頷くとも首を振るでもなく、曖昧な笑みを浮かべている。



―――あの話とは・・・ケーキのレシピのことか?





―――・・・ねぇ、王子妃様。

こんなに怖くて冷たい仏頂面のどこがいいんだい?

パトリック様のほうが、断然大人で優しくていい男だろ?・・・―――



こそっと囁くサリーの声が聞こえた。


―――・・・・「きゃっ・・・」


こっそりと何か言いかけたエミリーのお腹のあたりに腕をまわし、ぐいっと引き寄せ、サリーから離した。



「・・・サリー、聞こえておる・・・」


「ぁ・・・アラン様。えっと、今度、一人で来てもいいですか?」




「・・・考えておく」

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