オトナの秘密基地

私が車を停めていたマンションへ行く道も通り過ぎ、当然のように中田さんの家の前で車は停まった。

夜に見る中田さんの家の風景は、やっぱりどこか懐かしい感じがする。

そう、玄関がこの位置で、ここに表札と「出征軍人の家」と書かれた札を出していた。

結局、帰らぬ人となった征二さんの分まで、懸命に子ども達を立派に育て上げた和子さんが住んでいた家。

和子さんの想いがぎゅっと詰まったこの建物で、中田さんと私は……。


「考え事は後回しにして、とにかく入ろう」

既に鍵を開けていた中田さんに促され、本日二度目の「お邪魔します」を言い、先に玄関の中へ通される。


「次に入る時は、ただいま、だからな」

「ええっ! そんなにすぐ、私がここに来る事に決めちゃったんですか?」

「もちろん。実家に帰っても居場所がないんだろ」

「そうですけれど……」

「だから、これから和実の居場所はここ」


そう言いながら、後ろに立っていた中田さんが、私の体をふわりと優しく包み込んだ。



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