オトナの秘密基地
座っているその場所に手招きされて、マスターと私は彼のそばへ。

中田さんが、そっと私の方へ手を伸ばした。

でも、その手は私を掴むのではなく、探るような動きだった。

あれ、と思って彼の表情を見て、気づいた。

焦点が、合っていない……。

どこを見ていいのかわからない、といった瞳が、落ち着きなく動いていた。

咄嗟に、中田さんの手を握る。


「ここにいるよ、大丈夫だよ」


でも、私の声は聞こえていないのだろう。

私が握った手を、彼はいったん離した。

そして自分の口元を指さしている。

私とマスターは、一瞬顔を見合わせて、それからすぐ中田さんの口元を見守る。

ゆっくりと、わかりやすく口を動かしてくれようとしている。

「目も、見えなくなった」

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