プレシャス
「志穂っなぁんで怒らないの!?」
なんでって…
…なんでだろう
会えたら話したいことだってたくさんあったのに
“許せない”
そう思わなきゃいけないのかもしれない
でも
なんか…
心の中は空っぽで。
目の前の二人を見ても
頼子みたいに
気持ちが怒りに繋がらない。
ただ…
まるで映画の中のひとコマを見ているような…
そんな感覚しか沸いてこなくて。
怒る頼子を押さえながら苦笑いしか出てこなかった。
「…行こ?次の講義始まっちゃうし」
「ちょっ、志穂ぉ?」
ずっと睨み付けてる頼子の肩を叩いて
ただ静かに席を立つあたし。
この場からすぐにでも離れたい
ただ
そんな気持ちでいっぱいで。
でも
「あれ?志穂じゃん?」
そんなあたしを呼び止めたのは
なんの悪びれる様子もなく笑う
修の方だった。