君がいたから。



初めて人の肉に
物が突き刺さる感触を味わった。
血の臭さを感じた。
大量の血が流れているのを見た。

カタンと言う音と共に
包丁が私の手から落ちた。

ガタガタと震えた。
足が、手が異常な程震え始めた。


「ママ、ママ、ママ...」


動かない体で母を見た
母は口を手で覆って
信じられないと言う様子だった。

妹が泣き叫んでいる。
この状況を
あの年で把握しているのか。


「千絵っ!!!!」


母が私の名を呼んで
駆け寄ってきた。


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