幽霊の思い出話

 声を荒げる私に、石川様は驚いたように目を丸くしていた。それでも私は言うのをやめなかった。

「石川様っ。お母様きっと待ってますよ」

「ふぅーっ。そうだな。おまえならそう言って、俺の背中を押してくれるような気がしていた」

 そう言って、立ち上がりカードを私に渡した。

「会計済ませてくれ。いってくるよ」

「いってらしゃいませ、石川様」

 そう言って頭を下げると、照れたように自分の頭をくしゃくしゃとしながら石川様は出入口へと歩いて行った。

 カードを従業員に渡し、会計を済ませてもらい石川様にカードを渡し見送った。

「また帰ってきたら話し聞いてくれや。ありがとうな、真沙美」

「いえ、ありがとうございました」

 エレベーターの扉が閉まり、石川様は帰っていった。
< 55 / 279 >

この作品をシェア

pagetop