ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「君は表情もポージングも、絵心をそそるいいモデルだよ。

なかなか気に入るモデルなんていないからね。

今後もときどきモデルになってもいいなんて言ってくれて、助かるよ」


頭が真っ白になった。


「そんなの、むむ無理です!

あたしそんなこと言ってない」


動揺して、ついそんなことを口走ってた。


「何言ってるの? 自分から言い出したくせに」


そう言って不思議そうにあたしを見る黒川さんの黒い目が、なぜか、ふと底なしの闇に見えた。


(言い出したくせに)


穏やかながら、いつもと微妙に違う口調に。

急に全身にざわわと鳥肌が立つ。


「言わなかったとは言わせないよ」


ちょっとふざけたように言う、ほんのり微笑む形の良い唇。

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