愛のかたまり
 彼女のペースに完全に嵌まってしまっている。

 一方的なように思えて、実は妙に心になじむにぎやかな言葉の渦。あたしは何も考えず、頷いたり笑ったりしていればよかった。

 はじめてのゲームに海さんはきゃあきゃあと大騒ぎで、下手すぎるくせにひどく楽しそうで、あたしまでなんだか変に心が高揚した。

 そのうちお腹がぐうぐうなりだしてあたしは赤面した。

 あらまあ、と言って彼女はあたしを見つめ吹きだすと、ますます顔を赤くするあたしに、ごめんごめんと言いながらまだ目の縁に涙を溜めて立ち上がる。

 キッチンで鼻歌まじりに料理をはじめた後姿に、記憶の片隅にしまい込んだ映像をダブらせた。

 料理研究家のママが家のキッチンに最後に立ったのはいつのことだったろう。
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