愛のかたまり
 目の前には巨大なオムライス。
 
 魔法のように出現したそれは、ぽってりとしたたまごがつやつやと光って見えた。一口食べると、適当な味付けの、芯から家庭な味がした。友達の家に行くとよそのママが作ってくれた味。家では絶対に出てこないような。

「おいし」素直に言葉が出た。

 海さんは、でしょでしょと頷いてめちゃくちゃ嬉しそうな顔をした。それからいくらか心配そうに付け加えた。

「あなたはねえ、少し痩せすぎているからもっと食べなくてはダメ」

 途端に身体が硬直した。

 繰り返しママや、大人たちが言う言葉。誰も心配しているわけでもなく、ただ自分の責任になっては困るだけだ。

 それでも厄介な存在になるのを恐れて必死で食べていたけれど、出来損ないの身体はうまく栄養を取り込めない。

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